発声練習のやり方:話す前・歌う前の5分ルーティン
話す前の発声練習は5分で十分です。体とあごをほぐし、ゆっくり低い呼吸を数回してから、ストロー発声、リップロール、ハミングのような軽い発声で声帯を目覚めさせ、低い音から高い音へなめらかに滑らせ、早口言葉で唇と舌を動かし、最後に本番の第一声を実際の声量で言います。無理のない中くらいの声量で行い、終わったあと声が楽になっていれば正解です。
目次 (7)
正しい5分の発声練習をすると、最初のひと言から「寝起きの声」ではなく「いちばん調子のいい声」で話し始められます。ルーティン本体、時間がない日の2分版、歌う人向けの追加メニューを紹介します。
なぜ話す前に発声練習をするのか
発声練習は、呼吸、声帯、口の動きを、使う前に連携させるためのものです。何もしないと、話し始めの数分は声がかすれたり、息っぽくなったり、詰まったりしがちです。のど、あご、舌の筋肉がまだ冷えていて、呼吸も浅いからです。発声練習をすれば、普段は会話を20分続けてやっと出る声で話し始められます。
話す人向けのウォーミングアップの研究は歌い手向けより少ないものの、一部はしっかり裏づけがあります。ハミング、リップロール、ストロー発声のように口を半分閉じた状態で声を出す練習は「SOVT(半閉鎖声道)エクササイズ」と呼ばれます。音声科学者のインゴ・ティツェは、口を部分的に閉じると声帯の上の気圧が上がり、声帯同士が強くぶつからずに効率よく声が出ることを示しました(Titze, 2006, Journal of Speech, Language, and Hearing Research)。下のルーティンがこれらを中心にしているのはそのためです。
発声練習は緊張対策にもなります。緊張のほうが大きな問題なら、人前で話す緊張を克服する方法も読んでみてください。
5分でできる発声練習のやり方
次の6ステップを順番に、無理のない中くらいの声量で行います。
| ステップ | 時間 | 練習 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1. 体 | 0:00〜0:45 | 肩回し、首のストレッチ、あごほぐし、あくびため息 | のどを締めつける力みを取る |
| 2. 呼吸 | 0:45〜1:30 | ゆっくり低い呼吸3回、長い「スー」 | 体の低いところから安定した息を送る |
| 3. SOVT | 1:30〜2:30 | ストロー発声、リップロール、ハミング | 最小限の力で声帯を振動させる |
| 4. サイレン | 2:30〜3:15 | 「ん」や「う」で低→高→低 | 音域を広げ、声の切り替わりをなめらかに |
| 5. 滑舌 | 3:15〜4:15 | 「あえいうえおあお」、早口言葉 | 唇、舌先、舌の奥を目覚めさせる |
| 6. 第一声 | 4:15〜5:00 | 本番の最初の言葉を実際の声量で | 練習を実際に話す言葉につなげる |
1. 体(45秒)
肩を後ろに5回回してストンと落とし、首を左右に10秒ずつ傾けます。耳のすぐ前のあごの付け根に指先を当て、口をだらんと開けたまま10秒やさしくもみます。最後に本物のあくびをして、「はぁー」と中くらいの高さから低いほうへため息をつきます。これを2回。
2. 呼吸(45秒)
お腹に手を当て、鼻から4カウントで吸ってお腹がふくらむのを感じ、「スー」と8カウント以上、まったく同じ強さで吐きます。3セット行います。
3. ストロー発声、リップロール、ハミング(1分)
- ストロー発声(20秒)。 普通のストローをくわえて楽な高さでハミングし、上下に音を滑らせます。頬はふくらませず、ほとんど力を感じないのが正解です。
- リップロール(20秒)。 軽く閉じた唇に息を通し、モーターボートのようにブルブル震わせながら声を乗せて音を動かします。唇が震えない人は、指先で口角を軽く押さえましょう。
- ハミング(20秒)。 唇を閉じ、歯は離して「んー」と唇がビリビリするまで響かせ、「んー・あ」「んー・お」「んー・い」と開きます。
4. サイレン(45秒)
「ん」(「りんご」と言うときの、舌の奥を上あごにつけて鼻に響かせる「ん」)か「う」で、楽に出せるいちばん下からいちばん上まで、サイレンのようにゆっくり往復します。5回、声量は軽めに。上で締めつけや裏返りを感じたら、もっと低いところで折り返します。話すためなら音域の真ん中だけで十分です。
5. 滑舌:「あえいうえおあお」と早口言葉(1分)
演劇や放送の発声練習で定番の発声表を、口の形をはっきり変えながら読みます。
- あえいうえおあお、かけきくけこかこ、させしすせそさそ、たてちつてとたと
- なねにぬねのなの、はへひふへほはほ、まめみむめもまも
- やえいゆえよやよ、られりるれろらろ、わえいうえをわを
続けて「パタカ」を10回、ゆっくりから少しずつ速く。仕上げに早口言葉を2つ、ゆっくり言ってから少し速く言います。北原白秋の「あめんぼ」(「水馬赤いな ア イ ウ エ オ/浮藻に小蝦もおよいでる」)も昔からの定番です。音別の一覧は早口言葉50選にあります。
6. 本番の第一声(45秒)
実際に言う最初の2〜3文を、その場に必要な声量で声に出します。会議室なら、のどで押さずに奥の壁に届けるつもりで。やり方は声を大きくする方法で解説しています。
時間がない日の2分発声練習
電話、面接、乾杯のあいさつまで2分しかないときは、効果の大きいステップだけ残します。どれも静かにできます。
- ほぐす(15秒)。 肩を落とし、あごをだらんとさせて左右にゆっくり動かします。
- 呼吸(20秒)。 鼻から吸って、口から長く均等に吐く呼吸を2回。
- ハミングかリップロール(40秒)。 低い音から高い音へ3回ゆっくり往復。口を閉じたハミングなら、オフィスでもほとんど聞こえません。
- 早口言葉を1つ(15秒)。 「生麦 生米 生卵」を3回、ゆっくりから少し速く。
- 第一声(30秒)。 最初の一文を、本番の速さと声量で2回言います。
歌う前の発声練習(追加メニュー)
歌う人は、上のルーティンに音域、動き、強弱のコントロールを足します。サイレンのあとに5〜10分加え、いきなり最高音から始めず、必ず音域の真ん中から外へ広げていきましょう。
- リップロールかストローで5音スケール(2分)。 「ドレミファソファミレド」を半音ずつ上げ、また下げます。
- ハミングから母音へ(1分)。 ハミングした音のまま、響きを失わずに「んー・あ」と開きます。
- 「ミメマモム」のアルペジオ(2分)。 母音が変わっても音色をそろえます。
- 軽いスタッカート(1分)。 「ハッハッハッ」と短く弾ませ、声の立ち上がりと息の支えを整えます。
- ロングトーンの強弱(1分)。 楽な高さで、弱く、少し強く、また弱くを8カウントで。音程がぶれないように。
- 半分の声量で本番の曲(2分)。 歌う曲のフレーズを半分の声量で歌ってから、本番の声量にします。
自分の楽な音域がわからない人は、無料の音域チェックで、いちばん低い音と高い音を数分で調べられます。
発声練習の前後に避けたいこと
本番直前に声帯を乾かしたり、刺激したり、酷使したりすることは避けます。米国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)は、水分をしっかりとり、声を休ませ、叫び声やささやき声のような極端な使い方を避けるよう勧めています(NIDCD)。
- 咳払い。 強い咳払いのたびに声帯がぶつかり、癖になりがちです。つばを飲む、水を飲む、軽くハミングするで代わりにします。
- ささやき声で「のどを休める」。 ささやき声は休憩になりません。休ませたいなら黙りましょう。
- 大声でのウォーミングアップ。 発声練習は楽な中くらいの声量で。いきなり叫ぶと、本番前に声が疲れます。
- 乾燥と水分不足。 直前のがぶ飲みより、一日を通して少しずつ飲みましょう。
牛乳についての事実。 牛乳で痰が増えるという話は、ほぼ俗説です。研究のレビューは牛乳が粘液の分泌を増やさないと結論づけ、似た舌触りの豆乳飲料でも同じ「のどにまとわりつく感じ」が報告されていました(Wüthrich et al., 2005, Journal of the American College of Nutrition)。ただ、その感覚自体は実際にある人もいるので、気になる人は本番前の1〜2時間は控えましょう。
発声練習の効果を確かめる
発声練習のあとは、前より声が楽になっているはずで、疲れていてはいけません。いちばん簡単な確認は、同じ2文を練習の前とあとで録音して聞き比べることです。温まった声は、たいてい最初の言葉から安定し、響きがあり、かすれが少なくなります。
英語で話す機会がある人は、Voceris で安定性、響き、ボーカルフライを録音ごとにスコアで比べられます。Voceris は英語の話し声を分析するアプリなので、英語の会議や面接、プレゼンの直前チェックに向いています。
発声練習は今日のための準備で、声を長期的に鍛えるものではありません。数週間かけて息の支え、響き、音域を育てる練習は声を鍛える方法で紹介しています。
専門家に相談したほうがいいとき
発声練習で痛みが出ることはありません。だんだんつらくなる、少し話しただけで声が疲れる、痛みがある、音域が狭くなった、声がれが2〜3週間以上続く、といった場合は耳鼻咽喉科を受診してください。そのうえで言語聴覚士が、声を健康に使う方法を指導してくれます。
よくある質問
発声練習は何分やればいいですか?
会議、電話、プレゼンの前なら5分で十分です。歌う人が本格的なリハーサルや本番の前に行うなら10〜20分が目安です。2分しかなくても、まったくやらないよりずっと効果があります。
いちばん手っ取り早い発声練習は?
ハミングかリップロールで低い音から高い音へ3回往復し、本番の第一声を2回声に出して言うことです。ストローをくわえてハミングする方法も、オフィスや車の中でできるほど静かです。
歌う前や話す前に牛乳を飲むのはよくないですか?
研究のレビューでは、牛乳が痰(粘液)を増やすという根拠は見つかっていません。ただ、飲んだあとに口やのどがまとわりつくように感じる人はいるので、気になる人は本番前の1〜2時間は避けましょう。
咳払いはのどに悪いですか?
強い咳払いを何度もすると、声帯同士が強くぶつかり、さらに咳払いしたくなる悪循環になりがちです。つばを飲み込む、水を一口飲む、軽くハミングするなどで代わりにし、いつも咳払いしたくなる場合は医師に相談してください。
大きな声を出せない場所でも発声練習はできますか?
できます。口を閉じたハミングとストロー発声は音が小さく、それでも声のウォーミングアップになります。リップロールや早口言葉も、車の中やトイレ、カメラをオフにしたオンライン会議の前に小さな声で行えます。
他の言語: EnglishEspañolPortuguêsDeutschFrançaisItalianoNederlandsPolskiTürkçeРусский한국어简体中文العربيةहिन्दीBahasa IndonesiaTiếng Việt